タイでは、原則として外国人が土地を購入することは認められていません。しかし、一定の条件を満たせば購入できる場合もあります。
これまでは、日本からは製造業を中心にたくさんの日系企業が投資を行い、その中で条件を満たした企業が土地購入をして工場を立てて操業してきました。
現在タイでは富裕層の外国人や投資家誘致を目的に、タイに最大10年間居住できる「長期滞在者(LTR)ビザ」の新設とともに、タイ内閣において一定の条件を満たした場合の土地購入に関する法案整備が進められています。
そこで今回は、日本人を含めた外国人がタイで土地を購入するための条件や方法、所有権や登記はどうなるかについて、分かりやすく解説します。
外国人がタイの土地を購入できる条件
これまで、タイでは外国人の土地購入を一切認めず、日本人を含む外国人が取得できる不動産は、居住用・投資用ともにコンドミニアムのみとなっていました。
しかし、「タイに長く住みたい」「事業のために工場を建てたい」などの理由から、外国人がタイの土地購入を希望するケースも多く、2022年の10月に初めて「一定の条件を満たせば、外国人の土地の購入を認める」という法案がタイ内閣で承認されたのです。
しかし、保守派や国民からの反発もあり、その後撤回されています。
2022年10月に閣議決定された内容は、以下の通りです。
4,000万バーツ以上・3年以上の投資
1つめの条件は、4,000万バーツ以上の投資資金を保有し、3年以上の投資期間がある外国人であることです。
4,000万バーツは日本円で約1億5,520万円なので、大変高額の投資となります。
1ライ(=1,600㎡)以内
2つめの条件は、購入する土地の広さに関するものです。
投資金や投資期間の条件を満たした場合でも、外国人がタイで購入できる土地の広さは1ライ(=1,600㎡)以内に限定されます。
指定された地域内
3つめの条件も、土地に関するものです。
外国人は、タイの土地法によって定められた「指定された地域内」の土地しか購入することができません。
具体的には、「バンコク都、パタヤ市、テーサバーン(地方自治区)、または都市計画法により住宅地域に指定されている地域」のみの土地の購入が認められています。
これらの法案も5年間の時限措置であり、その後は改正される可能性もあることは頭に入れておく必要があります。
しかし、2022年10月の閣議決定は撤回されたため、現状、外国人が個人でタイの土地を購入することはできなくなっています。
とはいえ個人でこれほどの投資をしてまで土地を購入し、家を建てるメリットはほとんどないので、仮に認められても影響を受ける人は少ないと考えて良いでしょう。
2023年6月現在、タイで土地や一軒家を購入できる可能性があるのは、以下のケースに限られます。
法人として購入する
外国人は、法人としてならタイの土地を購入することも可能です。
タイ投資委員会(BOI)奨励企業やタイ工業団地公社(IEAT)認定の工業団地に立地する企業の場合は、外資比率に関係なく土地の購入が認められています。
ただし、以下の法人はタイでの土地購入が認められていないため、注意しておきましょう。
- 外国人が登録資本金の49%超の株式を保有している
- 外国人株主が全株主の過半数を占める株式会社
タイの土地を購入したら所有権・登記はどうなる?
タイで購入した土地の所有権は、外国人の場合も認められます。
土地を購入したら、管轄の土地事務所(Land Office)で登記の手続きを行い、土地の所有権を証明する「権利証書(Chanote)」や、土地の使用権を証明する「使用権証明書(Ngor Sor Saam Gor)」などの書類を発行してもらいましょう。
どの書類が発行されるかは、土地によって異なります。あらかじめ、どのような権利なのかを把握したうえで購入しましょう。
また、タイで土地を購入する際は、不動産取引における詐欺被害を防ぐ目的で、登記手続き完了後の決済(代金支払)が推奨されています。
タイの土地購入で知っておきたいリスク
一定の条件を満たした外国人は、タイの土地を購入して所有権を持つことが可能です。
ただし、日本の土地を購入する場合とは異なり、タイの土地購入にはリスクが伴うことも知っておかなければなりません。
ここからは、タイの土地を購入する前に知っておくべき3つのリスクについて解説します。
為替変動リスク
タイバーツ/円の為替相場は日々変動しています。
例えば、2021年8月6日には1バーツ=3.29円だったのに対し、2023年2月28日現在は1バーツ=3.89円に推移しています。
400万バーツの土地を購入する場合、1バーツ=3.29円であれば約1,316万円で購入できますが、1バーツ=3.89円であれば1,556万円支払うことになるため、注意が必要です。
また、タイで長期的な不動産投資を考えている場合、仮に土地の価格自体が上昇したとしても、売却のタイミングによっては為替差損がでることもあります。
購入だけではなく、売却のタイミングについても、慎重に判断する必要があるでしょう。
カントリーリスク
カントリーリスクとは、簡単に言えば、その国の政治や経済、社会状況に関するリスクのことです。
1997年の通貨危機の時のようなタイ国内で急激なインフレが起きたり、政治的なクーデターが起きたりすると、土地の資産価値が大きく下落してしまう可能性があります。
立憲君主制に移行した1932年以降だけでも、19回ものクーデターが繰り返されていますので、この政治的なカントリーリスクは無視することはできません。
日本やアメリカなどの先進国に比べ、タイなどの新興国はカントリーリスクが高いと言われています。土地を購入する際には、十分に留意する必要があるでしょう。
自然災害リスク
タイは、およそ5ヶ月間にも及ぶ「雨期」があることから、集中豪雨や洪水などの自然災害が発生しやすい国です。
2011年には、800人を超える死者を出した大規模な洪水被害が起き、現地に進出している日本企業の多くが工場を休止する事態となりました。
また、2004年に「スマトラ島沖地震」の際にタイ南部プーケットなどで津波被害がありました。
しかし、タイでは北部・西部・南部に活断層はあるもののバンコクやシラチャ、パタヤなどには活断層がないために地震のリスクはほとんどありません。
今後も、大規模な自然災害が起こるリスクは決してゼロではないため、自然災害リスクにどのようなものがあるのか把握しておきましょう。
最後に
タイでは、いくつかの条件を満たせば外国人でも土地を購入し、所有権を得ることができます。
しかし、日本人が投資用不動産として購入する場合、投資金額が現実的でないことや5年間の時限措置などを考慮すると、土地よりもコンドミニアムを選ぶのが一般的です。コンドミニアムであれば、土地購入のような高額の投資条件もなく、外国人が所有権を得ることが認められています。
また、バンコクやシラチャ、パタヤなどの人気エリアなら、購入した物件を日本人駐在員向けに貸し出し、家賃収入を得ることも可能です。
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