タイにも、日本の消費税と同じような税制度があります。
しかし、せっかくタイに滞在するなら、お得にショッピングを楽しみたい!という方も多いでしょう。
本記事では、タイの消費税(VAT)の説明と、観光旅行の際のVAT還付方法を解説しています。
長期滞在をされる方向けに、タイの税制度の概要を解説していますので、タイへの長期滞在が決まっている方や、これからタイに移住を検討している方も、ぜひ参考になさってください。
タイの消費税は「VAT(付加価値税)」
タイにおいて、日本の消費税にあたるものをVAT(Value Added Tax:付加価値税)といいます。
VATはタイだけではなく、EU加盟国や他のアジアの国々にも採用されている税制度です。
物品の購入だけでなく、サービスにも課税されるのが特徴で、税率は国によって異なります。
ここからは、タイのVATについて解説します。
税率
タイのVATの税率は7%です。
タイでは1992年にVAT(付加価値税)制度を導入しました。
VATは、タイ国内の物品販売・サービス・輸入に対して課税され、企業に納税義務があります。日本企業がVAT対象国でビジネスを行っている場合は、事業所がタイ国内になくてもVATの課税登録と申告が必要です。
また、VATは物品やサービスの最終消費者に課税されるため、旅行者にもVATが課されます。旅行客は、一定の購入金額を超えた場合、手続きによってVATが還付が可能です。
旅行者向けのVAT還付方法は、のちほど解説します。
日本の消費税との違い
日本の消費税とタイのVATとの違いは、タイでは完全インボイス方式を採用していること、還付請求の代わりに繰り越し控除が選べることです。
インボイス方式とは、一定の要件を満たした請求書を売り手が買い手に発行し、その請求書に記載された金額をもとに仕入税額を控除することです。
2023年10月に、日本でもインボイス制度がスタートしましたが、まだ課税事業者と免税事業者の区別があります。
タイにもOutput VAT(VAT事業者が売り上げが発生したタイミングでTAX INVOICEを発行)とInput VAT(日本の仮払消費税方式のような制度。物品・サービスの対価を税抜で記載するので、販売者からのTAX INVOICEのない支払いは仕入れ税額控除が適用されない)があり、それぞれのVATの差額を月次で確定申告します。
月次申告の結果、InputVATがOutputVATの金額を超えたとき、還付請求の代わりに繰り越し控除が選択できるのもタイのVAT方式の特徴です。
タイの料金表示
タイで買い物をしたり、レストランで食事をすると、次の2つの表示方法があります。
- net:VATとサービス料が表示価格に含まれる
- ++:VATとサービス料の別途支払いが必要
++表示の場合は、表示料金×サービス料×VATの計算式で総額を計算できます。
VATは、もとの金額にサービス料を加算したものに課税されるため、計算には注意が必要です。
VATの還付方法【旅行者向け】
日本からの旅行者で、一定の条件を満たした場合は、空港でVATの還付が受けられます。
VATの払い戻し請求ができる人の条件は、以下です。
- タイ人以外の観光客
- タイ滞在期間が年間180日未満
- 航空会社の乗務員以外の人
- 購入日から60日以内に本人が申請する
- バンコク・チェンマイ・プーケット・ハジャイの国際空港から空路でタイを出国する
- ”VAT REFUND FOR TOURISTS”の表示がある店舗で買い物をする
また、VATの還付を受けるためには「同日・同一店舗で2,000バーツ以上」という買い物条件があり、貴石や銃、禁止商品の購入によるVATの還付は受けられません。
ここからは、旅行者向けのVATの還付方法を紹介します。
買い物をした店での手続き
VATは、買い物をした店での払い戻しが受けられます。具体的な手続きは、下記の3点です。
- 2,000バーツ以上買い物したお店で、購入日当日にパスポートを提示する
- 「VAT払い戻し申請書」に必要事項を記入
- VAT払い戻し申請書と「税金請求書」を受け取る
帰国時に空港でVATの払い戻しを受ける際、帰国後の書類送付時に必要となるので、2,000バーツ以上の買い物をして、VATの還付を受ける場合はこの3ステップを踏みましょう。
空港で払い戻す
空港でVATの払い戻しを受ける際の手順は以下の通りです。
- 税関(Custom Inspection for VAT REFUND)のカウンターで、「VAT払い戻し申請書」「税金請求書」と購入品、パスポートを提示して税関職員にスタンプを押してもらう
- チェックイン後にVAT払い戻しカウンター(VAT Refund Office Revenue Dept.)で①の書類とパスポートを提示する
- 確認後、VATが払い戻される
空港での手続きでは、以下に注意が必要です。
- 申請書類・申請購入品・パスポートは手荷物品に入れる
- 手続きに時間がかかるので、時間に余裕を持つ
10,000バーツを超える購入品は、税関のカウンターと払い戻しカウンターの両方で提示が求められます。
必ず手荷物にいれるようにしてください。
日本帰国後に書類で払い戻し手続きする
空港で時間がなくて払い戻しができなくても、税関のカウンターでスタンプを押印してもらった書類があれば、日本から郵送でVATの払い戻し手続きが可能です。
「VAT払い戻し申請書」税金請求書(パスポート番号記載のもの)とパスポートのコピー(顔写真つきページ・タイの入出国の日付が記載されたページ)、返金先のクレジットカードのコピーを郵送すると、クレジットカードにVATが返金されます。
利用できるクレジットカードは、Visa、Master、JCBのみです。
タイのVAT以外の税制度【長期滞在者向け】
タイの税制度は、VATだけにとどまりません。
ここからは、タイで長期滞在を検討する際に欠かせない、代表的な税金を紹介します。
法人税
タイの法人税率は20%です。
タイ国内で事業を活動を行う法人(外国企業の支店を含む株式会社やジョイントベンチャー、営利事業を行う社団・財団など)は法人所得税を申告します。
タイで事業会社を設立した場合、登記時にタイ商務省事業開発局(DBD)から13桁のタックスID番号が発行されます。
タイ国外で設立された事業会社の場合、タイでの事業開始日から60日以内に、歳入局に対してタックスID番号の税務登録申請を行わなければいけません。
一方、タイ国内で事業をしない法人は、サービス料・配当・利息・賃貸料などのタイ国内の源泉所得だけが課税対象となります。
タイの法人税の申告納税は年2回です。事業年度の6か月後に中間申告を行い、中間申告で申告した金額が、決算時の課税所得より25%以上、下回った場合、追徴課税があるので注意が必要です。
個人所得税
タイの滞在期間が1年のうち合計で180日以上になると「タイ居住者」とみなされ、個人所得税が課されます。
タイの個人所得税は、累進課税で、税率は最大35%です。
課税対象は、タイ国内の源泉所得・タイ国外の源泉所得(タイ赴任中の住宅手当・引っ越し費用や一時帰国費用・日当および旅費・交通費・医療費・教育手当・研修手当など※)となるので、タイ赴任中の方も確定申告が必要となります。
※業務上必要な語学研修は非課税
特定事業税(SBT)
タイの特定事業税(SBT:Specific Business Tax)は、不動産販売業・金融機関・証券・保険など、特定の事業分野に課税されます。
不動産販売・商業銀行・金融・証券業の税率は3.3%で、生命保険や質屋は2.75%です。
海外送金に対する源泉徴収
タイ居住者が非居住者に配当送金や支店利益などで送金する場合、10〜15%の源泉徴収が必要となります。支払日の翌月7日までに申告・納税が必要です。
土地家屋税(LAND AND BUILDING TAX)
毎年1月1日時点で、タイに土地や家屋を所有している方は、同年4月末日までに土地家屋税の納税義務があります。
課税対象は、土地・建物またはコンドミニアムのユニットです。
暗号資産税(Cryptocurrency Tax)
ビットコインやイーサリアムなど仮想通貨・暗号通貨による利益は、収入としてみなされ、所得税の対象となります。課税されるタイミングは、暗号通貨を売却・譲渡したときや、法定通貨に換えたとき、そして仮想通貨をほかの仮想通貨に変更したときです。
その他の税金
そのほかのタイの代表的な税金には、下記があります。
- 相続税・贈与税
- 石油所得税
- 印紙税
- 関税
- 物品税
- 看板税
タイに長期滞在する方にとって、税金の申告と納税は必須です。
- 申告漏れの場合:タイで税務調査後、最大で未納額の100%の加算税
- 無申告の場合:最大で未納税額の200%の加算税
故意でなかったとしても、申告漏れ・無申告はタイで脱税とみなされ、多くの加算税が課されたり、ビザ発給にも影響します。
税の申告漏れがないよう、十分注意してください。
タイで所得税を節税する方法【タイ滞在年間180日以上】
タイに年間180日以上滞在される方は、個人所得税を納税しなくてはいけません。
しかし、タイの個人所得税にも控除があります。
タイの節税方法を知らないまま放置すると、毎年数万バーツ多く納税することになりかねません。
ここからは、タイに長期滞在する方に向けて、タイで所得税を節税する方法を紹介します。
毎年の確定申告
タイに居住する場合、日本の給与とタイの給与、タイの現物給与を合算して、年に1回確定申告を行わなければいけません。
タイの個人所得には、以下の控除項目があります。
- 基礎控除:雇用または著作権から得る所得の50%、10万バーツ以下
- 本人控除:6万バーツ
- 配偶者控除:6万バーツ(本人と配偶者を合算して最大12万バーツまで控除)
- 児童控除:3万バーツ/人
- 生命保険料控除:最大10万バーツ
- 納税者本人の健康保険料控除:最高25,000バーツ
- 終身年金料控除:課税所得の15%まで。20万バーツを上限とする
タイでは源泉徴収がありますが、日本のような年末調整はありません。
したがって、現地の会計事務所に依頼するか、自分で申告するかは別として、確定申告を行わないと、源泉徴収による税金の還付が受けられません。
タイに暮らす場合、税金の払いすぎと申告漏れの両方に注意が必要です。
タイの生命保険に加入する
タイ国内の生命保険に加入することで、生命保険料控除が利用できます。
所得控除のためには、満期10年以上の保険契約が必要です。
そこで、おすすめは満期までが10年以上で、かつ貯蓄型の生命保険などの契約です。
満期になると満額の掛け金と利子が戻ってきます。
まとめ|タイの消費税
タイの消費税や税制度を紹介しました。
タイの消費税はVAT(付加価値税)と呼ばれ、旅行者で、かつ一定の条件を満たせば還付請求が可能です。
一方、事業者や法人にとっては、VATの申告は毎月の作業となります。
タイに年間180日以上滞在する方にとって、タイと日本の税申告は必須作業となりますので、税制度や申告に不安がある方は、現地の会計事務所に依頼するのがおすすめです。
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