タイで生活や旅行をする際に、日常的に関わるのが「消費税(VAT:付加価値税)」です。
買い物や食事、サービス利用など、ほとんどのシーンでかかるため、仕組みを理解しておくと無駄な出費を防ぎ、スムーズに生活できます。
旅行者にとっては免税制度の活用がポイントとなり、長期滞在や駐在員の方にとっては生活コストの見積もりに欠かせない知識です。
この記事では、タイの消費税の基本ルールから免税制度の利用方法、生活や不動産関連で知っておきたい点まで分かりやすく解説します。
目次
- タイの税金・VATの仕組みと還付方法
- 旅行者向け|VAT還付制度の利用方法
- タイへの旅行者の方向けVATの注意点
- 長期滞在者向け|タイで押さえておくべき税制度
- 日本とタイの消費税や税制の違いを理解する
- まとめ|タイの消費税について
タイの税金・VATの仕組みと還付方法

タイでは「VAT(Value Added Tax:付加価値税)」と呼ばれる消費税制度が導入されています。
現在の標準税率は7%で、1992年の制度導入以来、景気刺激策の一環として7%が維持されています。
VATは商品やサービスの取引に広く課税される点で、日本の消費税に似ていますが、免税対象や表示方法には独自の特徴があります。
タイで生活する人も旅行で訪れる人も、まずはVATの基本を理解しておくと安心です。
VATと日本の消費税との違い
日本の消費税は「広く一律に課税」が基本ですが、タイのVATでは医療や教育、一部の農産品などが非課税対象に含まれます。
さらに、日本の年1回納税に対して、タイでは事業者が月次で申告・納税する仕組みとなっており、制度設計に違いがあります。
VATが課税されるもの・免税となるもの
VATの課税対象は、物品販売・サービス提供・輸入などが中心です。
一方で、輸出取引や医療、教育関連のサービスは非課税とされており、対象範囲を把握しておくと無駄な支出を防げます。
タイの料金表示
タイで買い物をしたり、レストランで食事をすると、次の2つの表示方法があります。
- net:VATとサービス料が表示価格に含まれる
- ++:VATとサービス料の別途支払いが必要
++表示の場合は、表示料金×サービス料×VATの計算式で総額を計算できます。
VATは、もとの金額にサービス料を加算したものに課税されるため、計算には注意が必要です。
旅行者向け|VAT還付制度の利用方法

日本からの旅行者で、一定の条件を満たした場合は、空港でVATの還付が受けられます。
観光客にとっては大きな節約につながる制度なので、条件や手続きを正しく理解しておくと安心です。
ここでは、タイのVATの還付制度の条件や利用方法などについてご紹介します。
VAT還付の対象となる条件
VATの払い戻し請求ができる人の条件は、以下です。
- タイ人以外の観光客
- タイ滞在期間が年間180日未満
- 航空会社の乗務員以外の人
- 購入日から60日以内に本人が申請する
- バンコク・チェンマイ・プーケット・ハジャイの国際空港から空路でタイを出国する
- ”VAT REFUND FOR TOURISTS”の表示がある店舗で買い物をする
また、VATの還付を受けるためには「同日・同一店舗で2,000バーツ以上」という買い物条件があり、貴石や銃、禁止商品の購入によるVATの還付は受けられないので注意しましょう。
買い物をした店での手続き
VATは、買い物をした店での払い戻しが受けられます。具体的な手続きは、下記の3点です。
- 2,000バーツ以上買い物したお店で、購入日当日にパスポートを提示する
- 「VAT払い戻し申請書」に必要事項を記入
- VAT払い戻し申請書と「税金請求書」を受け取る
帰国時に空港でVATの払い戻しを受ける際、帰国後の書類送付時に必要となるので、2,000バーツ以上の買い物をして、VATの還付を受ける場合はこの3ステップを踏みましょう。
空港で払い戻す
空港でVATの払い戻しを受ける際の手順は以下の通りです。
- 税関(Custom Inspection for VAT REFUND)のカウンターで、「VAT払い戻し申請書」「税金請求書」と購入品、パスポートを提示して税関職員にスタンプを押してもらう
- チェックイン後にVAT払い戻しカウンター(VAT Refund Office Revenue Dept.)で①の書類とパスポートを提示する
- 確認後、VATが払い戻される
空港での手続きでは、以下に注意が必要です。
- 申請書類・申請購入品・パスポートは手荷物品に入れる
- 手続きに時間がかかるので、時間に余裕を持つ
10,000バーツを超える購入品は、税関のカウンターと払い戻しカウンターの両方で提示が求められます。
必ず手荷物にいれるようにしてください。
日本帰国後に書類で払い戻し手続きする
空港で時間がなくて払い戻しができなくても、税関のカウンターでスタンプを押印してもらった書類があれば、日本から郵送でVATの払い戻し手続きが可能です。
「VAT払い戻し申請書」税金請求書(パスポート番号記載のもの)とパスポートのコピー(顔写真つきページ・タイの入出国の日付が記載されたページ)、返金先のクレジットカードのコピーを郵送すると、クレジットカードにVATが返金されます。
利用できるクレジットカードは、Visa、Master、JCBのみです。
タイへの旅行者の方向けVATの注意点

タイでVATを活用する際には、いくつかの重要な注意点があります。
- 対象店舗や購入金額の事前確認
- 空港での手続き時間に余裕を持つ
- 購入品や申請書類は必ず手荷物に入れる
- 高額購入品は両方のカウンターで提示
- 申請期限は購入日から60日以内
VAT還付は「VAT REFUND FOR TOURISTS」表示のある店舗で同日・同一店舗2,000バーツ以上の購入が条件となり、10,000バーツを超える場合は税関と還付カウンター両方での購入品提示が必要です。
また、空港での手続きは混雑することが多いため、時間に余裕を持ち、申請書類や購入品は必ず手荷物に入れておきましょう。
加えて、購入日から60日以内という申請期限があるため、出国予定を考慮した計画的な買い物が大切です。
長期滞在者向け|タイで押さえておくべき税制度

タイに半年以上滞在し「居住者」と判定されると、日本同様に所得税の申告義務が発生します。
また、事業や投資を行う場合には法人税やVATの申告も関わってくるので、長期滞在予定のある方は事前に税金について確認しましょう。
ここでは、駐在員やビジネス目的での滞在者にとって、必ず押さえておきたい税金を整理します。
タイの税制度とVATの特徴
タイの税制度は日本と異なる特徴があります。VATでは完全インボイス方式を採用しており、事業者は月次での申告・納税が義務付けられています。
売上時に発行するOutput VATと仕入時のInput VATの差額を計算し、Input VATが上回った場合は還付請求の代わりに繰越控除を選択できる点も日本との違いです。
長期滞在者が関わる主な税金
タイでは個人所得税、法人税、特定事業税、土地家屋税など多様な税制があり、特に年間180日以上の滞在で居住者認定されると、日本とは異なる税務義務が発生します。
それぞれの税金について詳しく解説していきますので、参考にしてください。
法人税
タイの法人税率は20%です。
タイ国内で事業を活動を行う法人(外国企業の支店を含む株式会社やジョイントベンチャー、営利事業を行う社団・財団など)は法人所得税を申告します。
タイで事業会社を設立した場合、登記時にタイ商務省事業開発局(DBD)から13桁のタックスID番号が発行されます。
タイ国外で設立された事業会社の場合、タイでの事業開始日から60日以内に、歳入局に対してタックスID番号の税務登録申請を行わなければいけません。
一方、タイ国内で事業をしない法人は、サービス料・配当・利息・賃貸料などのタイ国内の源泉所得だけが課税対象となります。
タイの法人税の申告納税は年2回です。事業年度の6か月後に中間申告を行い、中間申告で申告した金額が決算時の課税所得より25%以上、下回った場合、追徴課税がある注意が必要です。
個人所得税
タイの滞在期間が1年のうち合計で180日以上になると「タイ居住者」とみなされ、個人所得税が課されます。
タイの個人所得税は、累進課税で、税率は最大35%です。
課税対象は、タイ国内の源泉所得・タイ国外の源泉所得(タイ赴任中の住宅手当・引っ越し費用や一時帰国費用・日当および旅費・交通費・医療費・教育手当・研修手当など※)となるので、タイ赴任中の方も確定申告が必要となります。
※業務上必要な語学研修は非課税
特定事業税(SBT)
タイの特定事業税(SBT:Specific Business Tax)は、不動産販売業・金融機関・証券・保険など、特定の事業分野に課税されます。
不動産販売・商業銀行・金融・証券業の税率は3.3%で、生命保険や質屋は2.75%です。
海外送金に対する源泉徴収
タイ居住者が非居住者に配当送金や支店利益などで送金する場合、10〜15%の源泉徴収が必要となります。
支払日の翌月7日までに申告・納税が必要です。
土地家屋税(LAND AND BUILDING TAX)
毎年1月1日時点で、タイに土地や家屋を所有している方は、同年4月末日までに土地家屋税の納税義務があります。
課税対象は、土地・建物またはコンドミニアムのユニットです。
暗号資産税(Cryptocurrency Tax)
ビットコインやイーサリアムなど仮想通貨・暗号通貨による利益は、収入としてみなされ、所得税の対象となります。
課税されるタイミングは、暗号通貨を売却・譲渡したときや、法定通貨に換えたとき、そして仮想通貨をほかの仮想通貨に変更したときです。
その他の税金
そのほかのタイの代表的な税金には、下記があります。
- 相続税・贈与税
- 石油所得税
- 印紙税
- 関税
- 物品税
- 看板税
タイに長期滞在する方にとって、税金の申告と納税は必須です。
- 申告漏れの場合:タイで税務調査後、最大で未納額の100%の加算税
- 無申告の場合:最大で未納税額の200%の加算税
故意でなかったとしても、申告漏れ・無申告はタイで脱税とみなされ、多くの加算税が課されたり、ビザ発給にも影響します。
税の申告漏れがないよう、十分注意してください。
タイでの節税と控除制度のポイント

タイの税制にも控除制度があり、扶養控除や社会保険料控除などを活用することで、駐在員でも税負担を軽減することが可能です。
さらに、日タイ租税条約を利用すれば二重課税を避けることもできます。
ここでは、タイでの節税や控除制度のポイントについて解説します。
主な控除項目
タイに居住する場合、日本の給与とタイの給与、タイの現物給与を合算して、年に1回確定申告を行わなければいけません。
タイの個人所得には、以下の控除項目があります。
- 基礎控除:雇用または著作権から得る所得の50%、10万バーツ以下
- 本人控除:6万バーツ
- 配偶者控除:6万バーツ(本人と配偶者を合算して最大12万バーツまで控除)
- 児童控除:3万バーツ/人
- 生命保険料控除:最大10万バーツ
- 納税者本人の健康保険料控除:最高25,000バーツ
- 終身年金料控除:課税所得の15%まで。20万バーツを上限とする
タイでは源泉徴収がありますが、日本のような年末調整はありません。
したがって、現地の会計事務所に依頼するか、自分で申告するかは別として、確定申告を行わないと、源泉徴収による税金の還付が受けられません。
タイに暮らす場合、税金の払いすぎと申告漏れの両方に注意が必要です。
二重課税を防ぐための外国税額控除
日本とタイの双方で課税される可能性がある所得に対しては、外国税額控除を活用することで二重課税を回避できます。
たとえば、日本で課税済みの給与所得や配当所得がタイでも課税対象になる場合、タイの確定申告で外国税額控除を申請することで、タイでの税額から既に支払った日本の税額を控除できます。
駐在員の場合、日タイ租税条約に基づいた正確な所得申告と証明書類の提出が必須で、これを怠ると本来控除できる税額も適用されません。
日本とタイの消費税や税制の違いを理解する

タイの税制度は、日本と比べると控除や課税方式に独自の特徴があります。
日本では給与所得控除や年末調整があり、会社がほとんどの手続きを代行してくれますが、タイでは個人で申告する必要があります。
また、課税対象となる所得範囲や税率も異なるため、給与所得だけでなく、タイ国外で得た収入も課税対象になる場合があるので注意しましょう。
誤解や手続き漏れを防ぐため、制度の違いを理解し、必要な書類を整理しておくことが重要です。
ここでは、タイと日本の税制の違いを簡単にご紹介します。
年末調整がないタイの所得税申告
タイには日本のような年末調整制度がないため、源泉徴収された税金の還付を受けるには、個人で確定申告を行う必要があります。
年1回、1月から12月までの所得に基づき申告し、控除や外国税額控除を反映させることで、過払い分の税金が還付されます。
駐在員は、タイでの給与所得やボーナス、海外からの所得を正確に申告することが求められ、期限を過ぎるとペナルティが発生する可能性があるため注意しましょう。
居住者・非居住者の違いと課税範囲
タイでは、年間の滞在日数が180日以上の場合「居住者」と見なされ、タイ国外で得た所得も課税対象になる可能性があります。
一方、180日未満の滞在であれば非居住者とされ、タイ国内源泉所得のみ課税されます。
この判定は、長期駐在や赴任期間の計画に直結するため、駐在前に滞在日数や所得の種類を整理しておくことが重要です。
また、居住者となる場合は、海外所得に関する申告も必要となるため、税理士や専門家に相談しながら計画的に手続きを進めると安心です。
まとめ|タイの消費税について
この記事では、タイの消費税や税制度を紹介しました。
タイの消費税はVAT(付加価値税)と呼ばれ、旅行者で、かつ一定の条件を満たせば還付請求が可能です。
一方、事業者や法人にとっては、VATの申告は毎月の作業となります。
タイに年間180日以上滞在する方にとって、タイと日本の税申告は必須作業となりますので、税制度や申告に不安がある方は、現地の会計事務所に依頼するのがおすすめです。
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